家の周りを飛ぶ小さな虫を、私たちはつい「蚊」や「コバエ」と一括りにしてしまいがちです。しかし、大量発生を引き起こす「ユスリカ」は、これらの虫とは生態も対策も異なります。敵の正体を正確に見分けることは、効果的な対策を講じる上で非常に重要です。まず、最も重要な「ユスリカ」と「蚊」の違いです。見た目は非常によく似ていますが、決定的な違いは、その「行動」にあります。ユスリカは、人の周りを飛び回ることはあっても、肌にとまって血を吸うことは絶対にありません。一方、蚊(特にアカイエカやヒトスジシマカ)は、積極的に人の肌にとまり、吸血します。もし、あなたの周りを飛ぶ虫が、肌にとまってチクッと刺してきたら、それは蚊です。また、静止した時の姿勢も異なります。蚊は、壁や天井に対して、体を斜めにしてとまりますが、ユスリカは、体を水平にして、前脚を少し上げるような姿勢でとまることが多いです。次に、「ユスリカ」と「コバエ」の違いです。「コバエ」という名前は、実は特定の虫を指す言葉ではなく、家庭内で発生する小さなハエ類の総称です。代表的なものに、生ゴミに集まる「ショウジョウバエ」や、排水溝のヘドロから発生する「チョウバエ」がいます。彼らとユスリカの最大の違いは、その「発生場所」と「発生規模」です。コバエは、主に家の中のゴミ箱や排水溝といった、限られた場所から発生するため、その数は比較的少数です。一方、ユスリカは、家の外の川や側溝といった、より広大な水域から発生するため、一度に数千、数万という、比較にならない規模で「大量発生」します。もし、家の外壁や窓が、黒い虫で埋め尽くされるほどの規模で発生しているのであれば、それはコバエではなく、ユスリカの仕業であると断定して良いでしょう。ユスリカは刺さない、しかし大群。蚊は刺す、しかし少数精鋭。コバエは家の中から、しかし少数。この違いを理解することが、パニックにならず、冷静に対処するための第一歩となるのです。
ユスリカと蚊の違い、そしてコバエとの見分け方