ユスリカとの戦いを有利に進めるためには、敵がいつ、どの時間帯に活動のピークを迎えるのか、その「活動時期」を正確に把握しておくことが不可欠です。彼らの行動パターンを知ることで、効果的な予防策を講じ、不快な遭遇を最小限に抑えることが可能になります。ユスリカの発生時期は、その種類によって多少異なりますが、日本で一般的に見られる多くの種は、年に二回の発生ピークを迎えます。一度目の、そして最大のピークが訪れるのが、「春」、具体的には4月から6月頃です。冬の間、水中の泥の中で幼虫(アカムシ)の姿で越冬していた個体が、水温の上昇と共に一斉に羽化を開始するため、この時期に最も大規模な大量発生が起こりやすくなります。そして、二度目のピークが訪れるのが、「秋」、9月から11月頃です。夏場の高温期に一時的に活動が落ち着いた後、再び気温が過ごしやすくなるこの時期に、もう一度発生の波がやってきます。真夏にはあまり見かけなくなるのは、多くのユスリカにとって、日本の夏の暑すぎる気温は、活動に適していないからです。次に、一日の中での「活動時間帯」です。ユスリカの成虫は、日中の強い日差しや高温を嫌います。そのため、彼らが最も活発に活動し、交尾のために「蚊柱」と呼ばれる大群を形成するのは、気温が下がり、日差しが和らぐ「夕方から日没後」にかけての時間帯です。この時間帯は、私たちが仕事や学校から帰宅し、窓を開けて涼んだり、洗濯物を取り込んだりする時間と重なるため、家の中に侵入されやすい、最も注意が必要な時間と言えるでしょう。春と秋、そして夕暮れ時。この、ユスリカが最も活発になる「魔の時間」を知り、その時間帯には窓を閉め切る、洗濯物は早めに取り込む、といった対策を意識するだけで、ユスリカによるストレスは大幅に軽減されるはずです。