ダンボールが害虫の温床となる原因は、ゴキブリのような大型の害虫だけではありません。実は、より微小で、しかしアレルギーなどの健康被害を引き起こす、別の種類の虫たちにとっても、ダンボールは最高の住処となり得ます。その発生の引き金となるのが、ダンボールが持つ「湿気を吸いやすい」という性質です。ダンボールは紙でできているため、周囲の湿気をスポンジのように吸収し、溜め込む性質があります。特に、押し入れやクローゼット、あるいは北側の部屋の隅など、元々湿気がこもりやすく、風通しの悪い場所にダンボールを長期間置いておくと、ダンボール自体が湿って、カビの発生を促します。そして、この「カビ」を主食とする、小さな害虫たちがどこからともなく集まってくるのです。その代表格が、「チャタテムシ」です。体長わずか1ミリ程度の、白っぽい、あるいは淡い褐色の微小な虫で、大量発生すると、まるで茶色い粉が動いているかのように見えます。彼らは、このダンボールに生えたカビを食べて繁殖し、その死骸やフンがハウスダストに混じることで、アレルギー性鼻炎や喘息の原因となる可能性があります。もう一つの代表格が、銀色に光る「シミ(紙魚)」です。彼らも湿度の高い環境を好み、カビだけでなく、ダンボールそのもの(紙)や、貼り合わせるための糊(デンプン)も食べるため、まさに天国のような環境です。ゴキブリのように直接的な不快感は少ないかもしれませんが、これらの虫が発生しているということは、その場所の湿度環境が著しく悪化しているという、家からの危険信号に他なりません。カビは、虫だけでなく、人間の健康にも直接的な悪影響を及ぼします。ダンボールを保管する際は、必ず風通しの良い、乾燥した場所を選ぶこと。そして、湿気の多い場所に長期間放置しないこと。それが、カビと、それを食べる小さな虫たちの発生を防ぐための、基本中の基本なのです。
ダンボールと湿気が呼ぶ、カビを食べる虫たち