夏の夜、腕や首筋にとまった小さな虫を、何気なく手で払いのけた。その数時間後、その場所が線状に赤く腫れ上がり、ヒリヒリとした痛みと共に、痛々しい水ぶくれ(水疱)ができてしまった。これは、強力な毒素を持つ「やけど虫(アオバアリガタハネカクシ)」による典型的な皮膚炎です。この化学熱傷とも言える厄介な症状を、跡を残さず、一日でも早く治すためには、パニックにならず、正しい手順に沿った治療を行うことが何よりも重要です。まず、STEP1は「徹底的な洗浄」です。やけど虫の体液に触れてしまった、あるいはその可能性があると感じたら、一刻も早く、その部分を大量の流水と石鹸で、優しく、しかし念入りに洗い流してください。こするのは厳禁です。泡で毒素を包み込み、洗い流すイメージで行います。STEP2は、「強力な冷却」です。洗浄後、清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷嚢を患部に当て、最低でも15分以上、じっくりと冷やし続けます。これにより、炎症の広がりを抑え、痛みを和らげることができます。STEP3は、「適切な薬剤の塗布」です。やけど虫による皮膚炎は、非常に強い炎症です。そのため、市販薬を選ぶ際は、単なるかゆみ止めではなく、炎症そのものを強力に鎮める作用のある「ステロイド外用薬(軟膏)」が最も効果的です。薬局で薬剤師に相談し、症状に合った強さのものを選びましょう。そして、最後のSTEP4が、「水ぶくれの保護」です。できてしまった水ぶくれは、絶対に自分で潰してはいけません。外部の細菌から傷口を守る天然の絆創膏の役割を果たしているからです。ガーゼや絆創膏で優しく保護し、自然に破れるか、吸収されるのを待ちましょう。この4つのステップを正しく実行することが、辛い症状から一日も早く解放されるための、王道にして最短のルートなのです。
やけど虫による水ぶくれ、正しい治し方の全ステップ