ほとんどのやけど虫による皮膚炎は、適切な初期対応と市販のステロイド軟膏で、時間をかければ治癒に向かいます。しかし、中には「たかが虫」と軽視していると、深刻な事態に発展するケースも存在します。自己判断で悪化させてしまう前に、速やかに皮膚科などの医療機関を受診すべき「危険なサイン」を知っておくことは、非常に重要です。まず、受診を検討すべき第一の目安は、「症状の強さ」と「範囲」です。線状の赤みや水ぶくれが、手のひらサイズを超えるほど広範囲に及んでいる場合や、水ぶくれが非常に大きく、パンパンに張って、今にも破れそうな状態である場合は、炎症が非常に強く起きている証拠です。市販薬では対応しきれない可能性があるため、専門医の診断を仰ぐべきです。また、日常生活に支障が出るほどの、焼けるような強い痛みが続く場合も、我慢せずに相談しましょう。次に、最も注意すべきなのが、「感染の兆候」です。掻き壊してしまったり、自然に破れたりした水ぶくれの傷口から細菌が侵入し、患部が異常に赤く、熱を持っている、あるいは黄色い膿が出てくる場合は、二次感染を起こしています。これは「とびひ」や「蜂窩織炎」といった、より深刻な皮膚感染症に発展する危険な状態で、抗生物質による治療が必要となるため、直ちに病院へ行くべきです。そして、非常に稀ですが、最も緊急を要するのが、「目」に毒液が入ってしまった場合です。やけど虫の毒素「ペデリン」が目に入ると、激しい痛みと共に、結膜炎や角膜炎を引き起こし、最悪の場合、失明に至る危険性さえあります。目に違和感を感じた場合は、こすらずに大量の流水で洗い流し、すぐに眼科を受診してください。また、被害に遭ったのが、皮膚の薄い顔や、首、あるいは陰部といったデリケートな部分である場合も、跡が残りやすいため、早めに受診することをお勧めします。子供やお年寄りは症状が重くなりやすいため、特に注意が必要です。「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、それは体が発するSOSサイン。専門家の力を借りることをためらわないでください。
やけど虫の水ぶくれ、病院へ行くべき危険なサイン