それは、新築から三年目を迎えたある爽やかな五月の朝のことでした。リビングの掃除機をかけていた私は、窓際のフローリングの上に、まるで誰かが塩をこぼしたような、ごくわずかな白い粉の塊を見つけました。最初は単なる埃かと思いましたが、拭き取っても翌日には同じ場所に再び粉が現れるのです。不審に思って目を凝らすと、その粉の真上にある木材には、画鋲を刺したような小さな穴が一つ、静かに開いていました。これが私と、恐ろしいキクイムシの種類のひとつであるヒラタキクイムシとの長い戦いの始まりでした。慌てて調べたところ、その粉はキクイムシの幼虫が木を食べ進んだ際に出す排泄物と木屑の混合物であり、穴は成虫が外へ飛び出した跡だということが分かりました。私の家で被害に遭っていたのは、こだわりのナラ材を使用したフローリングでした。キクイムシの種類によっては特定の木を好むそうですが、ヒラタキクイムシはまさにこのナラやオークといった広葉樹が大好物なのだそうです。専門の駆除業者に相談した際、キクイムシの種類を特定するために虫の死骸がないか探すようアドバイスされました。運よくカーテンの隙間で息絶えていた体長三ミリほどの茶褐色の虫を見つけ、顕微鏡で確認してもらった結果、やはりヒラタキクイムシであると確定しました。それからの日々は、精神的にも辛いものでした。一箇所だと思っていた穴は、ライトを当てて精査すると部屋の隅々にまで点在しており、まるで家全体が静かに食べられているような恐怖に襲われました。業者の説明によれば、キクイムシの種類によっては一度の産卵で数十個の卵を産み、それが再び木材の中に潜り込んでサイクルを繰り返すため、放置すれば被害は加速度的に広がるそうです。私たちは、被害箇所の木材を一部張り替え、残りの部分には強力な薬剤を一本一本の穴に注入する地道な作業を行いました。また、キクイムシの種類の中でも乾燥を嫌うものは少ないそうですが、室内の通気性を良くし、これ以上の定着を防ぐ環境作りにも努めました。この体験を通じて学んだのは、家は建てて終わりではなく、目に見えない小さな住民たちとの対話が必要だということです。キクイムシの種類を知ることは、敵の正体を知り、闇雲な恐怖から脱却するための唯一の手段でした。今、私の家には再び平穏が戻っていますが、あの白い粉を見つけた瞬間の動悸は今でも忘れられません。木と共に暮らす豊かさと、そこに潜むリスクを正しく理解し、早期発見に努めることが、家への愛情なのだと痛感しています。
我が家のフローリングから現れた謎の粉とキクイムシの戦い