年間数百台ものエアコンを分解し、その内部を徹底的に洗浄してきた私のようなクリーニング業者の目から見ると、エアコンという家電がいかに複雑で、かつ野生生物にとって魅力的な構造をしているかがよく分かります。お客様から「最近エアコンから変な音がする」とか「嫌な臭いがする」という相談を受けて現場に向かうと、フィルター掃除のレベルでは決して気づくことのできない不都合な真実、すなわちゴキブリの定着を目の当たりにすることが多々あります。一般の方が専門的な工具を使わずに実践できるエアコンのゴキブリ確認方法として、私が最初におすすめするのは、吹き出し口の「黒い点」の観察です。多くの方はこれを単なるカビだと思い込んでいますが、カビとゴキブリの糞には明確な違いがあります。カビは湿った場所にじわじわと広がるような平面的、あるいは綿毛のような質感をしていますが、ゴキブリの糞は直径一ミリ程度の、立体的で非常に硬い粒状をしています。ライトを当てて、ルーバー(風向き調整板)やその奥の送風ファンに、こうした「規則性のない硬そうな粒」が散らばっていないかを確認してください。もし、これが送風ファンの羽の隙間にびっしりと付着している場合は、そのエアコンはすでに彼らにとってのメインルート、あるいは休息場所となっています。また、臭いによる確認方法も非常に重要です。カビの臭いは「土臭い」あるいは「湿っぽい」ものですが、ゴキブリが定着しているエアコンからは、古い油が酸化したような、あるいは特有の獣臭、アンモニアに近い鼻を突く異臭が漂います。特に、スイッチを入れた瞬間に、カビとは異なる種類の不快な臭いを感じたら、それはドレンパン(結露水の受け皿)に個体が潜んでいるサインかもしれません。プロの現場では、確認のために「鏡」を多用します。ルーバーを全開にし、合わせ鏡の要領で内部の上方を確認すると、そこにはフィルターを外しただけでは見えないドレンパンの縁や、配管が本体に入り込む隙間が露出します。そこに卵の殻のようなものが落ちていないか、あるいは成虫の脚が覗いていないかを確認するのです。私たちはエアコンを分解する際、お客様に内部の汚染状況を写真でお見せしますが、中には「まさか自分の家で」と絶句される方もいらっしゃいます。しかし、確認方法さえ知っていれば、事態が深刻化する前に対処が可能です。もし、少しでも不審な粒や臭いを感じたら、無理に自分で解体しようとせず、まずはルーバーを動かしてライトを当てる。この初歩的なエアコンのゴキブリ確認方法を習慣にすることで、風とともに不快なものが降ってくるという最悪の事態を避けることができるのです。清潔な風を維持するためには、埃だけでなく、そこに潜む生命の痕跡に対しても敏感になる必要があります。