なぜ、私たちの家に紙を食べる虫が発生してしまうのでしょうか。その原因は、彼らが繁殖し、生き延びるために必要な「環境」を、私たちが無意識のうちに提供してしまっていることにあります。彼らを呼び寄せる三大要因は、「湿気」「餌」、そして「隠れ家」です。最大の原因は、やはり「湿気」です。シミやチャタテムシといった紙を食べる虫の多くは、湿度60%以上のジメジメとした環境を何よりも好みます。日本の梅雨時や夏場は、特に彼らの活動が活発になるシーズンです。結露しやすい窓際の本棚や、換気の悪い北側の部屋、風通しの悪い押し入れやクローゼットなどは、格好の発生源となります。特に、新築やリフォーム直後の建物は、コンクリートや建材の水分が完全に乾ききっておらず、家全体の湿度が高くなりがちで、これらの虫が大量発生する原因となることがあります。次に、「餌」の存在です。彼らの主食は、紙や糊に含まれるデンプン質やセルロース、あるいはカビですが、それ以外にも、ホコリやチリ、人間のフケや髪の毛、食べこぼしのカス、さらには他の虫の死骸まで、非常に幅広いものを栄養源とします。つまり、掃除が行き届いていない、ホコリっぽい環境は、彼らにとって餌の宝庫となってしまうのです。長期間動かしていない本棚の裏や、段ボールを積み上げた物置は、餌と隠れ家を同時に提供する、最高の繁殖場所となります。そして、彼らの侵入経路として、意外な盲点となるのが「外部からの持ち込み」です。古本屋で購入した本や、人から譲り受けた書籍、あるいは引っ越しの際に使った段ボールなどに、すでに卵や幼虫が付着しており、それが家の中で繁殖を始めるというケースは非常に多く報告されています。これらの原因を知り、湿気と餌、そして侵入経路を断つことが、紙を食べる虫との戦いに勝利するための、最も重要な戦略となるのです。