インターネット通販の普及で、私たちの家庭に日常的に運び込まれる段ボール。しかし、この便利な梱包材が、実はゴキブリやチャタテムシ、そして紙を食べる虫であるシミ(シルバーフィッシュ)といった、様々な害虫の侵入経路となり、繁殖の温床となっていることをご存知でしょうか。荷物が届いたら、段ボールはすぐに処分すべき理由が、そこにはあります。なぜ、虫たちはこれほどまでに段ボールを好むのでしょうか。第一に、その「構造」です。段ボールは、波状に加工された中芯を紙で挟んだ構造をしています。この波状の部分が作り出す、無数の暗くて狭い隙間は、虫たちにとって、外敵から身を守り、卵を産み付けるのに、まさに理想的な空間なのです。保温性や保湿性も高く、彼らにとって快適な住環境を提供します。第二に、「餌」としての魅力です。段ボールの接着に使われる糊には、多くの虫の好物であるデンプンが含まれています。また、段ボールそのものも、セルロースという、シミなどが好む栄養源でできています。さらに、輸送の過程で、様々な食品の匂いが染み付いていることもあり、害虫を強く誘引する原因となります。そして、最も恐ろしいのが、私たちの家に届く前の「流通過程」で、すでに虫や卵が付着している可能性があることです。商品を保管する広大な倉庫や、配送トラックの荷台といった、段ボールが山積みになっている場所は、害虫にとって格好の繁殖拠点です。そこに潜んでいた虫が、段ボールに卵を産み付け、それが荷物と一緒に私たちの家に配達され、暖かい室内で孵化し、大繁殖を始める。これが、家の中に害虫がいなかったはずなのに、突然現れるようになる、最も一般的なシナリオの一つなのです。この「トロイの木馬」とも言えるリスクを避けるための対策は、ただ一つです。「荷物が届いたら、すぐに玄関先で開封し、中身だけを家の中に入れる。そして、段ボールは速やかに畳んで、ベランダや屋外の物置など、次のゴミの日まで家の外で保管する」。この習慣を徹底することが、害虫の侵入リスクを劇的に減らす、最も簡単で、最も確実な方法なのです。
ダンボールは虫の楽園?すぐに捨てるべき理由